不動産売買全般

この家買っても大丈夫?中古住宅の購入におけるインスペクションの説明義務化と費用について解説!!

おさる
おさる
中古住宅って、どこに欠陥があるかわからないから、購入検討するとすごく不安だな。
じゅいち
じゅいち
そう思っている人は多いよね、でも今ではインスペクション(既存住宅の建物状況調査)制度のおかげで、以前よりも安心してく中古住宅が購入できる環境が整ってきているんだ!!今日はインスペクション制度について解説していくよ!!

既存住宅の建物状況調査(インスペクション)の必要性

インスペクション制度の成立の背景

総務省の調査(※1)によると平成30年の日本全国の空き家数846万戸で過去最高の水準に達し、空き家、中古住宅のストックがどんどん増えていますが、日本には「新築神話」が残っていて、今でも日本の中古住宅市場は、全住宅流通量の15%弱です。それに比べると欧米諸国のアメリカやイギリスなどは全住宅流通量の80%以上とかなり高い水準にあります。

欧米諸国の住宅の平均寿命は日本の住宅の平均寿命と比べると長く、DIY文化も発達しているため、手直ししながら住宅を長持ちさせ、価値が下がらないような配慮や工夫がされているからです。また、アメリカでは中古住宅の取引制度が整備されていて、不動産の適正価格を客観的に評価する「アプレイザー(物件査定士)」や、建物の状態を調査する「インスペクター(物件調査士)」といった各州の認可・免許を必要とする専門家制度があるため、全住宅流通量に占める中古住宅の流通量が割合が大きくなっていると思われます。

最近の日本でも、従来の「つくっては壊す」の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換はかるためにも、中古住宅流通市場の発展が必要で、より消費者が安心して中古住宅を購入できる制度として、2016年5月に宅地建物取引業法の改正で建物状況調査(インスペクション)のあっせん可否の説明が義務化されました。
また、2020年4月の民法改正によって、不動産の売買ではインスペクションを活用する機会が増えていくものと予想されます。

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既存住宅の建物状況調査(インスペクション)とは

宅地建物取引業法が規定するインスペクションは、既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士が、国の定めた既存住宅状況調査方法基準に従って行う調査のことを指します。
民間企業では、以前から「ホームインスペクション」や「住宅診断」等の名称で独自の建物状況調査サービスを展開している会社もありますが、この記事は宅地建物取引業法が規定するインスペクションについてご説明します。
不動産のインスペクションとは、既存住宅の建物状況調査のことを指し、構造耐力上主要な部分雨水の浸入を防止する部分について専門家が行う調査のことを指します。

調査対象と調査方法

調査の対象となる建物は、宅建業法上の既存住宅です。「既存」とは、人の居住に供されている住宅もしくは人の居住に供されたことのある住宅又は建築工事完了日から1年を経過した住宅ことであり、「住宅」とは、「人の居住の用に供する家屋」のことであり、一戸建、共同住宅(マンション・アパート)は自己使用・賃貸用とも「住宅」に含まれます。

店舗や事務所は宅建業法上の「建物状況調査」の対象には該当しませんが、任意に事前調査をすることができます。

調査部位

既存住宅の建物状況調査ではインターフォンや食洗器等の住宅設備に関しては対象外になります。売買代金の中に含まれている住宅の付帯設備に関しては、売主が作動確認を行い、不具合状況を「付帯設備および物件状況確認書」作成して記載することが必要です。

調査方法

※国土交通省が作成した建物状況調査紹介用リーフレットより抜粋

インスペクションは調査方法のほとんどが目視の検査であり、調査には限界があります。住宅が完全に欠陥がないと断定するものではないということ注意しましょう。

インスペクションの費用

インスペクションの相場は4~6万円前後が一般的ですが、最低限の基本調査になります。床下や屋根裏に進入するより詳細な診断は追加オプションで取り扱っている業者が多いようなので依頼する際はどこまでの調査をしてくれるかと追加費用の確認が必要です。

インスペクションに要する時間と期間

物件の大きさや一戸建てやマンションなどにより所要時間はまちまちですが、インスペクションに要する時間は大体3時間程度です。


中古住宅の売買の際に建物状況調査(インスペクション)は必ずやらなければならないのか?

既存住宅の建物状況調査(インスペクション)は、2018年4月1日の宅地建物取引業法の改正に伴い、不動産会社に対して以下の3点が義務付けられました。

不動産会社に義務付けられたこと
  1. 媒介契約締結時 建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載した媒介契約書面を依頼者に交付する
  2. 重要事項説明時 物状況調査の結果の概要、建物の建築・維持保全の状況に関する書類の保存状況を重要事項として説明する。
  3. 売買契約時 建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した売買契約書を交付する

義務付けられたのは、不動産会社ですので、売主や買主はインスペクションを行う義務はありません。 2020年4月の民法改正に伴い、インスペクションの重要性が高くなることが予想されます。 改正民法では争点が「買主が通常の注意を払らえば発見できたかどうか」(瑕疵担保責任)から、「契約書に書かれていたかどうか」(契約不適合責任)になります。契約不適合責任は、契約書の内容と異なるものを売ったときに売主が負う責任です。例えば、雨漏りをしている物件でも、売買契約書の容認事項の中に「この物件は雨漏りしています」と記載し、それに関して買主が了承していれば、契約不適合責任は負わないということです。そのため、民法改正後の売買では、売却する不動産がどのような状態のものであるかをしっかりと調査して契約書に記載することが非常に重要になってきます。契約不適合責任を回避するには、売買契約書に目的物の内容をしっかり明記することが必要となります。


既存住宅の建物状況調査(インスペクション)のメリットとデメリット

既存住宅の建物状況調査(インスペクション)のメリット

  1. 引渡後のトラブルを回避できる。
  2. 競合物件と差別化して、安心して売却・購入できる。
  3. 既存住宅売買かし保険を付保要件の一つとなる。

既存住宅の建物状況調査(インスペクション)を実施しておけば、売買契約書に建物の状況を明記することができますので、売主としては建物に関して契約不適合責任を負う心配が減り取引後のクレーム回避に繋がります。また買主としては建物の状況を専門家に診断してもらいより安心して購入することができます。既存住宅の建物状況調査(インスペクション)は、売主と買主の双方に安心感を与えるという効果があるのです。 既存住宅の建物状況調査(インスペクション)に合格していると既存住宅売買かし保険を付保要件の一つとなるという点です。売主としては瑕疵担保保険まで付保して売却すると、物件にさらに付加価値を与えることができ、高く売ることができる可能性があり、買主としては後日、物件に瑕疵が発見された場合、その補修費用の一部を保険料によってまかなってもらうことができるのでさらに安心して購入することができます

既存住宅の建物状況調査(インスペクション)のデメリット

  1. 調査費用が発生する。
  2. 物件に対する粗探しとなり、価格交渉の材料になってしまう。
  3. 修繕費が発生する場合がある。

不動産の売買における仲介手数料等の諸費用は高額になる場合も多く、さらなる費用負担を強いられることになる。②と③については売主のみのデメリットになります。買主側から行うインスペクションは、値引き交渉に繋がりやすいです。また、インペクションをすることによって不具合が明らかになり、高額な修繕費を支払わないと売却できない場合もあります。


既存住宅売買のかし保険とは

保険の対象と支払限度額

既存住宅売買のかし保険とは、売却後、物件に瑕疵による不具合が見つかった場合、その補修費用のを保険料によってまかなうことができる保険です(免責金額あり)。 既存住宅売買のかし保険は、国土交通大臣が指定した住宅瑕疵担保責任保険法人から提供されている保険であり、不動産会社やハウスメーカーが行っているアフターサービスとは異なります。既存住宅売買のかし保険の対象となる部分は、建物状況調査(インスペクション)の調査対象範囲である構造耐力上主要な部分雨水の浸入を防止する部分です。 保険期間1年~5年、と1住戸あたりの支払限度額は500万円~1000万円(免責金額あり)になります。保険金の支払い対象となる主な費用は、補修費用調査費用転居・仮住まい費用等です。

既存住宅売買のかし保険の付保の要件

瑕疵担保保険に加入するには、以下の2つの要件を満たすことが必要です。

  1. 建物状況調査(インスペクション)に合格している建物であること(1年以内のもの)
  2. 新耐震基準に適合した建物であること。(1981(昭和56)年6月1日以降に建築確認申請を行った建物)

まず、建物状況調査(インスペクション)に合格していること、かつ新耐震基準に適合した建物であることが必要ですただし、建物状況調査(インスペクション)の合格の日付が古過ぎるとその後劣化が進んでいる可能性がありますので、過去1年以内に合格している建物が要件の対象となります。1981年5月31日以前の建物(旧耐震基準時代の建物)であっても、全ての建物が新耐震基準を満たしていないわけではありません。堅固に作られていれば新耐震基準を満たしている建物は存在します。耐震診断を行って新耐震基準を満たしていることを証明できれば、旧耐震基準時代の建物であっても既存住宅売買かし保険の付保は可能です。既存住宅売買かし保険に加入することによって、「住宅ローン控除」、「登録免許税の軽減」等の税制優遇を受けることができるようになります。


まとめ

おさる
おさる
これで安心して中古住宅が購入できるね。
じゅいち
じゅいち
そうだね、安心だけではなく、インスペクションに合格して、既存住宅売買かし保険に加入すれば、住宅ローン控除のような強力な税制の優遇措置が受けられるんだ!!
おさる
おさる
買主にとっては大きなメリットだね。
この記事のまとめ

従来の「つくっては壊す」の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換はかるためにも、中古住宅流通市場の発展が必要で、より消費者が安心して中古住宅を購入できる環境や制度を整えるためにできたのが、既存住宅の建物状況調査(インスペクション)です。既存住宅の建物状況調査(インスペクション)を実施して合格することにより、売主としては建物に関して契約不適合責任を負う心配が減り、取引後のクレーム回避に繋がり、買主としては建物の状況を専門家に診断してもらいより安心して購入することができます。